司馬遼太郎の『国盗り物語』斎藤道三編を読み解く⑮川手城、火炎剣

 

国盗り物語 斎藤道三 前編 川手城、火炎剣の章では、

 

土岐頼芸の使いで川手城を訪れる西村勘九郎。城内での政頼の仕打ち、帰路での決闘を描いています。

 

国盗り物語紀行では川手城につて記載していますよ。

 

斎藤道三 前編 川手城、火炎剣-あらすじ

川手城

深芳野を得てから西村勘九郎は川手城を盗ることに専念した。

赤兵衛と耳次を事前に川手城内に出入りさせていたため、城内の大体の様子は分かったが、自分の目でも確かめておきたかったので、頼芸の使者として政頼を訪ねることにした。

城を見た勘九郎は、立派な造りだと感心しつつ、赤兵衛と耳次から聞いた建物の配置・部屋割りを確認している。

 

城内に案内された勘九郎は、部屋に通されず、庭に案内された。

庭に案内した近習頭の名は明智九朗頼高と申すもので、勘九郎に好意を持っているようだ。初対面だったが、なんとなく馬の合う二人だ。

明智は挨拶をし、その場を去り勘九郎一人が残された。一刻待っても政頼は現れない。これはいやがらせだろうと思いその場で勘九郎は横になった。

やがて、政頼の家来十数人が現れた。一人が勘九郎を怒鳴ったが、微動だにしない。

ほどなくして、政頼が現れた。

勘九郎は居住まいを正し、それなりの挨拶をしたが、政頼は勘九郎を嫌っているので、「そちが、油屋か」と無碍な態度を取った。

これに対し勘九郎は、頼芸様の使いで来ているにも関わらず、このような扱いを受けるのは頼芸様を辱めているのも同じことと、啖呵を切った。

すると、政頼の態度が変わり、今までの対応を詫びた。

 

勘九郎は別室に通され、湯漬けを頂戴した。明智九朗頼高が相伴役をしている。

明智は勘九郎にそっと忠告をした。

帰路、闇討ちの計画があるとのことだった。

 

火炎剣

 

川手城では、闇討ちの計画を実行すべく準備が整っていた。討手の物頭には可児権蔵(かにごんぞう)が選ばれた。

権蔵は十人ばかりを連れ、城外の三丁松原あたりに身を隠し、勘九郎が現れるのを待った。

 

勘九郎は湯漬けを食べ終わり、赤兵衛と耳次を呼んだ。耳次には帰路を探りに行かせ、赤兵衛には荷車等を用意するよう指示をした。

しばらくして、耳次と赤兵衛が戻ってきた。

荷車に積んである鍋に荏胡麻油をたっぷりと入れ、その上に薪を並べ火をつけた。やがて、炎が上がった。

炎につられて川手城下の町の者が集まり、荷車の後をついてきた。

これには、可児権蔵以下の者は手が出せない。手を出せば、川手城の者とばれてしまうからだ。

しかし、と可児権蔵は襲う決断をし、荷車の集団を襲った。人々は方々に逃げた。可児権蔵の手の者が一人斬られた。後日の証拠にと首を取られた。

そこへ、可児権蔵が立ちはだかる。が、勘九郎の槍さばきに権蔵は感服する。そして、二言ばかり言葉を交わして引き揚げたのだった。

 

翌日、勘九郎は鷺山城に登城し、昨日の川手城での対応、仕打ちを頼芸に報告した。

頼芸は驚き仰天した。勘九郎も政頼を討つべしと煽ったものだから、頼芸はその気になり下知状を書いた。

勘九郎は下知状を持って、美濃の小豪族、郷侍どもの城をまわりはじめたのである。

川手城、火炎剣の章-レビュー

川手城の章では西村勘九郎は土岐頼芸の使いで川手城を訪れています。

 

勘九郎が言葉巧みに頼芸の兄で守護の土岐政頼を煽り、川手城乗っ取りのきっかけを作るストーリーになっていますね。

 

そして、火炎剣の章では政頼が勘九郎を襲わせることで、政頼追放の根拠を決定付けています。

 

川手城での扱い、帰路での襲撃の件を聞いた頼芸は兄の政頼を追放し自らが守護になる事を決心します。

 

頼芸が決心をするのですが、この決心は勘九郎の演出によっての決心です。

 

頼芸は既に勘九郎の手のひらで操られているのですが、それに気づかない頼芸は勘九郎を頼りにしています。

 

この二人の関係が逆転するのは先の話ですが、司馬さんがどんなストーリーを展開させるのかが興味のあるところです。

 

 

 

川手城の章で明智九朗頼高という人が登場してきます。

 

司馬さんは西村勘九郎と明智九朗頼高は初対面なのに馬が合うと書いています。

 

帰路に勘九郎を討つ計画がある事まで漏らしているのですから、明智九朗頼高はよっぽど勘九郎のことを気に入ったようです。

 

国盗り物語ではこの明智九朗頼高は明智光秀の父親と紹介されています。

 

 

火炎剣の章では、勘九郎の帰路に討手として可児権蔵という人が登場してきます。

 

国盗り物語ではこの可児権蔵は立川文庫などで登場する可児才蔵の父と紹介されています。

 

可児才蔵は槍の名手と知られ、柴田勝家→明智光秀→前田利家→織田信孝→豊臣秀次→佐々成政→福島正則に仕えています。

 

可児才蔵は天文23年(1554)に美濃国可児郡(現在の岐阜県南部)で生まれているので、父親が美濃にいたとしてもおかしくはありません。

 

可児権蔵も勘九郎の槍さばきを見て只者でないと思い、勘九郎も権蔵のことを気にかけ、討ち取らずに逃がしています。

 

 

今後、可児権蔵と明智九朗頼高がどのようなかたちで現れ物語が進んでゆくのかが楽しみです。

国盗り物語紀行-川手城

 

川手城

川手城の歴史

美濃源氏の一族の土岐氏の第3代守護職、土岐頼康が、文和2年(1353)に川手城を築城する。以降第11代土岐頼芸までの本拠地となる。

広大な敷地に神社仏閣等を建立し、本殿は御殿風の建物であった。戦う城でなく、住居としての城である。

応仁元年(1467)、応仁の乱により都から逃げ延びた公家らが、当時の守護職であった土岐氏を頼り、川手に移住。これにより川手の地は都文化の花を咲かせることになる。当時その繁栄はかなりのものであり、西の山口(大内氏)東の川手と言われた。

明応2年(1494)、土岐氏の相続争いを発端とする船田の乱により、城は焼失。後に再建されるが、享禄3年(1530)、土岐氏を追放した斎藤道三が稲葉山城に拠点を移したことにより廃城となる。城下町である川手(現岐阜市上川手、下川手)は廃城後も斎藤道三等の加護で繁栄し、当時来日した宣教師等がその繁栄振りを書き残している。しかし、織田信長の時代には川手の町は殆ど岐阜に移り衰退した。

廃城後も土塁等が残っていたが、徳川家康の命により加納城の築城が開始されると、土塁の土は殆どが使われてしまった。

現在は済美高校の校内に石碑があり、当時の土塁の一部も残っている。城跡はこの済美高校の敷地と考えられている。

 

国盗り物語に出てくる川手城

司馬さんは西村勘九郎の目を通して、川手城を以下のように観察している。

濠は深い。渡れそうにもない。濠のむこうは、お土居になっている。石垣ではなく、濠を掘った土をかきあげたものである。およそ、防御力はない。
-(略)-
城内の建物は、どれをとっても華麗すぎ、およそ戦闘用建築物という実感が湧かない。
-(略)-
この中世風な旧式城館のよわいところがある。
城内や城下に、戦闘員が駐在していないことであった。高級武士たちは、みな知行地で小城を作って住んでいる。城から使い番が駆けつけたり、陣触れの法螺貝、太鼓がきこえはじめて駆けつけるのである。

(国盗り物語 斎藤道三前編 川手城の章より 引用)

土岐氏だけに関わらず、全国の守護が住んでいる城(館)は概ねこのような造りだったのでしょう。今日私たちが見る石垣があって天守がある城は斎藤道三、織田信長以降の事なのです。武家が興って以来、平清盛、源頼朝、足利尊氏も自分の城を築こうとせず、武将も城下に住まわせることもしなかった。

後に斎藤道三となる西村勘九郎は、今から盗ろうとするこの川手城の防御力の弱さを見て、これからの城は攻防用のための大居城でないといけないと思いました。この考えは稲葉山城の築城に取り入れています。

川手城と鷺山城の位置関係

勘九郎達は川手城よりの討手と争いながらも火炎荷車で鷺山城下に帰りますが、川手城と鷺山城の位置関係をgoogleマップで確認すると、約7kmの距離で徒歩で一時間三十分ぐらいですね。通路は平たんでアップダウンもなさそうですが、長良川が流れていますね、当時は橋は架かっていないでしょうから船で渡ったんでしょう。

川手城跡~鷺山城跡の地図(googleマップ活用)

 

国盗り物語 斎藤道三 前編

開運の夜 後の斎藤道三、松波庄九郎は妙覚寺を飛び出したが、乞食に成り下がっている・・・
奈良屋のお万阿 庄九郎は、青烏帽子の源八を討ったといって奈良屋を訪れるが・・・
運さだめ 奈良屋の護衛隊長になった庄九郎、荷駄を備前まで運ぶのだが・・・
小宰相 庄九郎は有年備中守の館に火を放とうとするがそこである女と遭遇するのであった・・・
京へ帰る 荏胡麻の買い付けをしながらも庄九郎は備前一国を盗れないだろうかと形勢を調べる。
淫楽~兵法者 奈良屋の主お万阿は松波庄九郎に会いに有馬温泉を訪れる。
お万阿悩乱~奈良屋の主人 庄九郎はついに万阿を抱き、奈良屋の主人になったのだが・・・
奈良屋消滅~美濃へ 庄九郎は名実ともに奈良屋を盗り、そこから一国を盗るべく美濃へ出立する。
常在寺~朱唇 庄九郎は美濃国に入り、常在寺の日護上人と兄の長井利隆に会う。
深芳野、西村勘九郎 長井利隆に同行し庄九郎は土岐頼芸に会う。名を西村勘九郎とする。土岐頼芸の愛妾深芳野も登場する。
京の夢、お万阿問答 一旦京の山崎屋に戻った庄九郎。庄九郎とお万阿の掛け合いがコミカルに描かれている。
槍術「一文銭」,槍、 槍 西村勘九郎が法蓮房時代より独学で学んだ槍術で名声を上げようとする。
水馬、林の中で 西村勘九郎はひょんなことから深芳野に接近する・・・
天沢履、虎の瞳、深芳野を奪る 勘九郎は得意の槍を使い頼芸と賭けをする・・・
川手城、火炎剣 土岐頼芸の使いで川手城を訪れる西村勘九郎。帰路で闇討ちにあうが・・・
那那姫 西村勘九郎は守護が住まう城を落とすために東奔西走する。
府城乗っ取り、大狂言 西村勘九郎率いる軍勢が守護・土岐政頼が住まう川手城を乗っ取りに向かう。